今年は例年より一週間遅く、九月十八日に収穫祭を行うことにしました。
お田植え祭の流れを汲みまして、白川伯家神道の神事の一環として執り行われました。
ここできますか十八号!
収穫祭の五日ほど前、いつも通り天気予報を見ますと、
台風十八号が発生し、本州には十七日から十八日にかけて直撃とのこと。
長く私のお米を買っていただいている方々には昨年の通信でもお伝えしましたが、
天日干しをしている稲木を七棟分なぎ倒していったのは、昨年の台風十八号でありました。
台風の一番盛んな時期だからかもしれませんが、台風十八号というのは毎年大型で大きな傷跡を残していく印象があり、
その名を聞くと自然と身構えている自分を感じています。
さて今年の十八号も評判通りなかなかの強者のようです。
公共交通機関も安全をとり、収穫祭前日の十五時ごろから山陰線は全線運休となりました。
台風の進路予想としては十八日の明け方には東北方面に抜けるとのことでしたし、
収穫の祭祀は天候に関わらず行う予定でしたから、山梨からきたスタッフたちを京都市内まで車で迎えに行くことにしました。
夕方の京都市内、少し風は強いものの特に台風の気配はありません。
綾部に近づくほど食事ができる場所が無くなってくるので、京都市内で食事をしてから綾部に向うことにしました。
ちょっとした旅行気分もあり、店内で話にも花が咲いて食後のコーヒーを…という流れになりましたが、
それでもその日は台風直撃コースの真っ只中にいますので、誘惑を振り切って綾部に向います。
高速道路に乗ったとたん、激しい風雨に見舞われました。ワイパーを最速モードにしても役に立たなかったのは初めての経験でした。
綾部市内に入るとみんなの携帯から避難勧告のアラームが輪唱のように鳴り響き、
土砂崩れや道路の浸水を心配しながらも、何とか宿にたどり着くことができました。
台風が過ぎ去った翌朝も小雨。台風が綾部より北側を通ると強風による被害が起こることが多いです。
しかし今回は台風が若干南に進路をとってくれたことで風の被害はありませんでした。
雨天のため、地元の集会所で祭祀の準備をします。祭祀では米・塩・水・お酒・乾物・季節の野菜や果物などを献饌します。
これは、これらの物を取り入れることで我々が身体を営んでいくように、
国の営みのための一番の象徴的で基本的なものを献饌することで、国の経営を祈念する意味があるようです。
その心を大切に、そしてこんな荒れた現代でも収穫ができるまでの
気候や環境を整えてくれたことに感謝しながら、ていねいに祭祀を行いました。
平らけく、安らけく、稲が育っていった様子を感謝する祝詞は、
宮司の柔らかい声色と相まって、絵巻物のように、それは美しいものでした。
お昼前からは、すっかり雨が上がりました。
田んぼは稲刈りの時に入りやすいように、お盆前から水を抜き、乾かして地面を固めます。
今年もしっかり固めていたのですが、前夜の大雨で、排水路がいっぱいになって、
田んぼの排水ができないため、四センチほど水が溜まったままです。
それでも土に足が入り込むことはなかったので、稲刈りを決行することにしました。
とはいえ、同じところを歩いているうちに、どんどんぬかるんでいきます。
田植えを毎年手伝ってもらっているTさんから、「前と違ってすっきりしていますね」というご感想を頂きました。
その言葉の通り、スコーンと抜けた空気感がありました。
もしかしたら前夜の台風が、大きく祓ってくれたのかもしれません。
稲刈りの最中、確かにいろんな人に声をかけたりかけられたりしながら作業したはずです。
でも振り返るとただ無心に軽やかに時間が過ぎていったとしか思えない、不思議な爽快感がありました。
覚えているのは鎌を入れる時の感触、そしてそこから立ち上がる稲の香り、さわやかに吹き抜ける風、土の感触…。「幸せやな~」と思いました。
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